ＳＳおとぎばなし「レモン姫」第５回

家から追い出されてしまったクマのレモン姫。

おりしも外は雪。
寒風吹きすさぶなか、おなかをすかせ、ゆくあてもありません。

窓からはあたたかな光がこぼれ、ぶににんの声が聞こえてきます。

「わーい、きょうはシチューだぁ」
「たーんとお食べ」

「たーんと」なんて、実際に使うところをみたことがありません。
「ざーます」っていうひとはテレビで見たことがあります。


おなかをすかせたレモン姫。
なにか食べようとしましたが、レストランでもコンビニでも拒否されてしまいました。
クレジットカードもってるのに・・・。



小雪のちらつくなか、ひとり公園にたたずんで、空を見上げます。
今夜は月も見えません。




「あんなこと、しなければよかったかな・・・・」


でも、あの熱い想いはおさえることができなかった。

そう、それは情熱。それが、パッション・・・・。

♪ｽﾞﾝﾁｬﾁｬﾁｬﾁｬﾁｬｽﾞﾝﾁｬﾁｬﾁｬﾁｬﾁｬﾁｬ～～

だれにも止められないこみあげる想い～
燃え上がるパッション
体ごとうけとめて～
Come on Come on Love me Come on




パチパチパチパチ・・・




どこからともなく聞こえてきた拍手に、レモン姫はあたりを見まわします。

すると、グレーのシルクハットにグレーのモーニングの、
まるでダイアナ妃の結婚式でのスペンサー公のような紳士が手をたたいていました。


「すばらしい！
ガウガウとしか聞こえないが、歌を歌っているのはわかる。
気持ちはじゅうぶんつたわったよ」






ああ、やっぱり歌ってステキ。
国も言葉も種族さえも越えて、心と心で通じ合うんだ。




この人がたすけてくれるかもしれない・・・・。





紳士は笑顔をうかべています。



「サーカスに売ったら、もうかるだろうなあ」















こうして、レモン姫は土管で一夜をすごすことになったのでした。

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